ミラーレスのような一眼カメラでの撮影において、「シャッタースピード」は写真撮影ではおなじみの要素と、あなたも認識していると思います。
しかし、アクションカメラやViogカメラなど動画撮影の世界においても、このシャッタースピードが映像の雰囲気や印象に大きく関わっているのは、意外に知られていません。
動画を製作する人でも、多くのユーザーはカメラのコマ数(30fpsや60fpsなど)にこだわるのに、シャッタースピードまではあまり意識しないのではないでしょうか?
今回の記事では、動画撮影におけるシャッタースピードの役割と、その調整がもたらす映像表現の違いに付いて、初心者でも理解しやすいよう丁寧に解説していきましょう。
シャッタースピードとは?動画撮影における基本
まずシャッタースピードとは、カメラが1フレームを記録するためにセンサーをどれだけの時間、光にさらすかと言う値のことです。
動画ではテープやデジタルになる前はフィルムで行っていたので、フィルムのコマ1枚1枚を1フレームと呼んでいました。
これが今の時代でも同じ概念で継承され、カメラに30fpsと設定すれば、1秒間に30コマで撮影されることになります。
それを映像の世界では「フレームレート」と呼んでいて、静止画(写真)で言うところのシャッタースピードとは違う解釈をします。
言い換えれば動画の30fpsは、1秒間に30コマのパラパラ漫画を見るのと同じとみて良いでしょう。
静止画では、シャッターが開く時間が長いほど(スローシャッターほど)光を多く取り込み、動く被写体がブレやすくなりますよね?
一方で短いシャッタースピード(ハイスピードシャッター)であれば、動きを止めてシャープな描写が可能になります。
この考え方は基本的に動画においても同様で、1秒間に記録されるフレームごとにシャッタースピードが関与しており、これが動きの滑らかさや被写体のブレ方に影響を与えているのです。
フレームレートと180度ルール:映画っぽい動きを作るために必要な要素
動画撮影では、フレームレートと言う概念と、シャッタースピードが密接に関わっています。
撮影時、カメラをを24fpsにする設定は、1秒間に24枚のフレーム(コマ)を記録することを意味します。
なぜ24fpsを引き合いに出すのかと言えば、劇場映画を撮る際のフレームレートが24fpsだからで、テレビの場合は30fpsまたは60fpsとなります。
学生時代、私は8ミリ映画を製作していましたが、カメラは24fpsのほかに18fpsと言うフレームレートを設定できました。
これは特に大きな意味がある訳でなく、単にランニングコストを抑えるためにあったのだと思います。
さて余談になりましたが、動画を撮る上で、適切なシャッタースピードを考える際に登場するのが180度ルール。
これは1フレームの露光時間を、フレーム周期の半分にしなさいと言う原則で、フレームレートが24fpsなら1/48秒、30fpsなら1/60秒が適切なシャッタースピードとなるルールです。
この設定は、映画のような自然で心地良いモーションブラー(被写体が動く時にできるブレ)を生み出すため、多くの映像作品で採用されています。
ちなみに180度ルールと言う名称は、元々、フィルム動画カメラにおけるシャッターアングルに由来します。
フィルム動画カメラは写真を撮る静止画カメラとは違い、360度回転する可変開角度シャッターが採用されています。
映画撮影では、回転するシャッターディスクがフィルムに光を当てる時間を決めていて、その角度を基準に露光時間を計算していました。
180度は1回転の半分であり、これがデジタル動画カメラでも標準的なモーションブラーの基準になっているんですね。
動画でシャッタースピードを変えることの効果とは?
さて、実際の撮影でシャッタースピードを変更すると、どのような映像表現が可能になるのでしょうか?
それは、シャッタースピードを速く(短く)設定すると、動く被写体をくっきりと写すことができ、アクションの一瞬をシャープに切り取ることが可能になります。
スポーツやしたたる水の映像など、動きの一つ一つを明瞭に表現したい時に最適です。
一方で、シャッタースピードを遅く(長く)することで、動きに伴う被写体のブレが映像に残り、より滑らかで印象的な描写になります。
これは絹のように流れる水や夜景など、幻想的な雰囲気を演出したい映像シーンに使うと効果的です。
ただし、露光時間が長くなる分、手ブレや光量オーバーのリスクも増えるため、NDフィルターなどで光の量をコントロールする(減光する)工夫も必要となります。
ケンコーND8フィルター
ここで注意したいのは、シャッタースピードを調整することで見た目の映像感が大きく変わることです。
180度ルールを守って撮影すれば、多くの人が “映画っぽい” と感じるナチュラルな仕上がりになります。
逆にこれを無視して、例えば1/1000秒など極端に速いシャッタースピードで撮影すると、動きがカクカクして、どこか不自然で冷たい印象の悪い映像になってしまうことがあります。
しかし最近では、このルールをあえて破ることで、個性的な映像表現を狙う映像作家も増えているんです。
例えば、戦闘シーンやパニックシーンでは、シャッタースピードを1/250秒以上にして動きを鋭く、緊張感のある映像を演出したりします。
実際の映画では、こんな感じの描写となります。
協力 DorkTVさん「Saving Private Ryan (1998)」
逆に、1/30秒以下の遅いシャッタースピードで、モーションブラーを強調し、夢の中のような世界を作り出すこともあります。
この映画の描写が良い例ですね。
協力 Agnusさん「Amelie | Motorcycle Scene |」
ね、なかなか幻想的で効果的でしょ?
このように、シャッタースピードは映像の “語り口” を変える強力なツールなのです。
シャッタースピードはアクションカメラやViogカメラでも変えられる
あなたが実際にカメラを操作する上では、まず使用するフレームレートを決め、それに合わせて180度ルールに従ったシャッタースピードを設定するのが基本です。
そして、表現したい映像のイメージに応じて、そこからシャッタースピードを微調整していくと良いでしょう。
たとえば、30fpsで撮影するならシャッタースピードは1/60秒を基準に設定し、スポーツシーンなら1/250秒、逆に情緒的なスローシーンなら1/30秒など、目的に応じた変化を加えてみるのが効果的です。
この設定は、人気のアクションカメラGoPro HERO13 BlackやDJI Osmo Action 5 Pro、ViogカメラSONY VLOGCAM ZV-E10 IIやNikon Z30でも可能。
ただ、全てをカメラ任せのオートにセットしていると設定できません。
メニューからシャッタースピードをセットできるようにしたり、モードをシャッタースピード優先やマニュアルにすることでできるようになりますよ。
補足
最後に、シャッタースピードの調整は、光量や撮影環境にも左右されるため、常に万能と言う訳ではありません。
屋外の明るい場所では、シャッタースピードを遅くすると画面が白飛びする原因にもなるので、その場合はNDフィルターで光を減らすことが不可欠になります。
また蛍光灯やLEDなどの照明では、特定のシャッタースピードでフリッカー(ちらつき)が発生することもありますので注意が必要です。
フリッカーをなくすには、50Hzの東日本では1/50秒に、60Hzの西日本では1/60秒に設定するのが良いでしょう。
このように、動画撮影におけるシャッタースピードは、ただの設定項目ではなく、映像の印象そのものを左右する重要な要素です。
静止画だけでなく、動画でもシャッタースピードの役割を理解することで、より表現力豊かな作品を撮影できるようになります。
初心者の方は、まずは180度ルールを意識して基本を押さえつつ、自分らしい映像を追求してみてはいかがでしょうか。
まとめ
●シャッタースピードは動画1コマの露光時間で、明るさとモーションブラーを左右する
●フレームレートに応じた露光時間(180度ルール)を基本に、自然な動画表現を狙う
●意図的にずらすことで演出効果がアップ
⇒速いシャッターでシャープな印象/遅いシャッターで幻想的な質感
とは言うものの、最後は好みや作品の世界観に合わせ、ルールは知って使い分けるものです。
初心者でも、まずはフレームレートの2倍露光(180ルール)から試してみましょう。
動画のイメージが格段に変わりますよ!
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