キヤノンはカメラメーカーとして、オートフォーカスや手振れ補正機能に、優れた技術があります。
一方で、光学機器メーカーとしてカメラだけではなく、双眼鏡でも第一級の製品をラインナップしているのをご存知でしょうか?
そんなキヤノンが、興味ある製品を発売しています。
その名は「PowerShot ZOOM」です。
名前が示す通りデジタルカメラでありながら、8倍ズームの単眼望遠鏡でもあるのです。
コンパクトで軽いこの商品は、どのような特徴があり、どんな使い方が考えられるでしょうか?
今回はユーザーレビューを交えながら、PowerShot ZOOMの魅力を探り評価してみることにしましょう。
キヤノン PowerShot ZOOMは、そもそもカメラか望遠鏡か?
PowerShot ZOOMは名前こそ “パワーショット” ですが、スタイルはどう見ても単眼鏡デザインです。
ボディには “Canon” のロゴは大きく記されているものの、しかし品名が入ったロゴがありません。
普通に判断すれば、これは明らかに「望遠鏡」ですよね?
しかし、電源を入れないことには何も映らないことから、普通の望遠鏡とは違います。
基本的な使い方は、電源を入れたらファインダーを覗き、ズームボタンで画角を決めたのちシャッターボタンを半押しして、オートフォーカスでピントを合わせるだけ。
シャッターボタンの半押しは、写真を撮る “photo” ボタンでも、動画を撮る “赤丸” ボタンでもOK。
photoボタンを押せば1枚写真が撮れ、赤丸ボタンを押せば動画撮影が始まり、もう1度押せば撮影が止まります。
オートフォーカスは、固定と追従(コンティニアス)が選べますが、どちらもフォーカスポイントは中央1点のみです。
マニュアルフォーカスはありません。
露出補正はできますがプログラムAEだけで、絞りやシャッタースピードを自分でコントロールするのは不可です。
デジカメとしてはペーシックモデルそのものですが、望遠鏡の機能の1つとして見れば、むしろこの方が操作が簡単で便利ですね。
ファインダーは大きくて見やすく、視度調整も可能になっています。
ただ液晶モニターはないので、撮った写真や映像(保存はmicroSD)は、Wi-Fiを介してスマホで確認します。
ファインダーが優れていることで、これで見る限り800㎜(35mm判換算)のデジタルズームでも綺麗に見えますが、センサーは1/3インチの極小サイズです。
並みのコンデジの1/2.3インチより小さいので、大きくプリントするには向きません。
せいぜい記録用として、2Lサイズくらいが限界でしょう。
動画はフルHD 1920x1980pで、4Kはありません。
なお縦横比は写真は4:3で、動画は16:9となります。
データファイルは写真はJPEGのみ、動画はMP4で扱いやすいです。
ちなみに写真は連写が可能で、秒間10コマのショット、動画は秒間30コマ固定となっています。
レンズのF値は100㎜時がf5.6、400㎜時はf6.3です。
800㎜時はデジタルズームなので、f6.3のままとなります。
決して明るいレンズではなく夜間での使用は苦しいですが、昼間なら800㎜でも強力な手振れ補正機能と相まって、安定して見ることができますよ。
800㎜の望遠と手振れ補正機能は、望遠鏡として大きな武器となるでしょう。
対してカメラとしての性能は大したことはないので、PowerShotと名乗っていても本機はやはり、カメラ付き望遠鏡と言えるのではないでしょうか。
ではここで、あるユーザーが撮影した、航空機の動画をご覧いただきましょう。
これで、本機のおおよその画質を把握できると思います。
協力 shirographyさん
そして次の項では、他のユーザーの皆さんのレビューを集めました。
ぜひ覗いて確かめてみて下さい。
キヤノン PowerShot ZOOMのユーザーレビュー
★「手持ちしやすく、操作もしやすい。画質は期待したレベルは満たしていたが、絶賛するレベルには届かない。バッテリーはそこそこ持つが、長時間撮りたいならモバイルバッテリーがあると良い。携帯性は軽いしコンパクトなので、持ち運びしやすい。手持ちした時のフィット感は優れているかと。画質を追求するタイプの方には確かに向かないかもしれないが、使っていて楽しいのは間違いない。」
★「国内外のコメントを読むと、暗所が苦手であるとか、三脚穴がないとか、動画が4Kでないという理由で低評価のようだが、実際に買ってみて使ってみた感想は、単眼鏡として見れば十分及第点だと思う。キヤノンの一眼レフ用の400㎜レンズは大砲のような大きさだが、さすがにこれを持って山を歩き回るのは、かなり本気なカメラ愛好家なのではないだろうか。散策をしながら鳥や虫を撮るのならば、断然持ち歩きやすい本製品を選ぶと思う。本製品の電子ファインダーは高精細で、とても見やすい。鳴き声のする方に本製品を向けて、ズームボタンを押す。操作も慣れれば大したことはない。スポーツ観戦など持って来いだと思う。」
★「ビデオカメラとしてはオモチャだが、望遠鏡としては高倍率でもあまり潰れないので、お得な望遠鏡かなとも。少し暗くなると、ノイズが多過ぎるほどになる。携帯しやすいと素早く撮れるのは素晴らしいが、今どきのスマホに慣れた目にはお粗末過ぎる画質。PowerShotの名前はつけない方が良かったかな。」
★「一言で言えば、手振れ防止機能付単眼鏡。ポケットサイズなのに、観察も記録もいとも簡単。老眼の身にあっては、どうせ見えないモニターや細かな調整機能は無くても大丈夫。いやいやこれは素敵なお散歩カメラだ。」
キヤノン PowerShot ZOOMの評価
参照:価格.comマガジン
ここからは上記の情報を基に、私がPowerShot ZOOMの評価をしてみたいと思います。
本機はカメラの付いた望遠鏡か、それとも望遠鏡の付いたカメラか。
結論から言うとメーカーの立場からすれば、望遠鏡 “主体” のカメラだと思います。
なぜならば、これがカメラが主体であるなら、カメラ性能の悪さばかりに目がいってしまうからです。
もし本機から望遠鏡機能を除いてしまうと、スマホのカメラが進化した現在、商品価値がなくなってしまうでしょう。
一方、本機の望遠鏡としての機能は、単眼鏡デザインにしてコンパクトボディを実現。
ファインダーを高精細で見やすいEVFにして、望遠鏡としての性能を十分に発揮しています。
デジタルズームとは言え800㎜の超望遠を達成しながら、キヤノン得意の高性能な手振れ補正機能で、一般の望遠鏡以上に見やすいのです。
これにさらにカメラ側にも高性能を求めたら、大きなサイズと重量増加で使い勝手は悪くなってしまうはず。
価格も高くなり、かえって商品として成り立たなくなるのでは、と思うのです。
手軽なサイズと重さを保ち、容易に望遠鏡に映った画像と映像を記録するには、本機の性能ほどに抑えておくのが良いのではないでしょうか。
参照:価格.comマガジン
また本機のユーザーが持つ不満の1つに、三脚穴がないことが挙げられています。
カメラ主体の製品であれば必須の装備ですが、ここで三脚が使える仕様にすれば、よりカメラ性能の弱点がスポイルされることでしょう。
そこでメーカーは、あえて搭載しなかったのではないか?と私は考えます。
それよりもアクションカメラのように、あらゆるフィールドで使用することを考慮して、防水または防滴機能を付けた方が魅力的ではないでしょうか。
そうした方が、より実用的に使えるに違いありません。
とは言え、現状でも使用目的を限定することで、楽しい商品となり得るのは確かでしょうね。
または
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