『SonyとGoProを比較』アクションカメラは日本製が消えてしまうのか!?

 

今や写真を撮ることと同じくらい、動画を撮ることが一般的になっています。

動画を撮るビデオカメラと言えば、以前ならSonyのハンディカムや、JVCのエブリオが世界の代表でした。

 

ところが、根本的にビデオカメラの概念をくつがえす、米国のGoProを代表とするアクションカメラ/ウェアラブルカメラの登場で、事態は急変。

またそれに輪を掛けるように、現在はスマートフォンの普及も影響して、動画を撮るアイテムはアクションカメラかスマホを使うのが普通です。

 

もう1つ、コンパクトカメラにも動画撮影機能があるのですが、こちらはすでにスマホに駆逐され、これで野外で動画を撮る姿など見かけません。

そんな中でGoProに対抗し独自のデザインで、アクションカメラの一端を担って来た、Sonyのアクションカムの生産中止が発表されました。

 

一機種だけは残ったものの、事実上のアクションカメラ事業から撤退です。

今回は、そんなSonyに何があったのか「SonyとGoProを比較」してみたいと思います。




 

Sonyはアクションカメラの開発思想がGoProと異なっていた

 

 

Sonyのアクションカムのラインナップは、FDR-X3000シリーズを最高峰にHDR-AS300シリーズがありますが、これらどちらも生産中止。

残るは廉価版のHDR-A50シリーズだけとなりますが、同機の登場は最も古く2016年3年なので、いずれ近いうちにこちらも姿を消すことでしょう。

 

一方でGoProはアクションカメラを開発後、常に順風満帆な経営ばかりではなかったものの、地道に不動の地位を築き上げて来ました。

Sonyのようなビデオカメラ先進会社が、GoProの躍進を黙って見ている訳はなく、すぐに同社独特の製品で対抗したのは、あなたも周知のことでしょう。

 

なのにSonyはなぜ、事実上のアクションカメラの事業から、撤退してしまうのでしょうか?

公には、既存の製品の部品調達が、コロナ禍の影響で上手くいかなくなったためと言っています。

これは決して嘘ではないでしょうが、これだけが理由ではないと私は思っています。

 

そもそも最も新しいアクションカム、FDR-X3000が発売されたのは2016年6月。

2021年8月現在で、すでに5年を経過しているのです。

 

この間にSonyは、全くアクションカムの新型を発表していません。

GoProの最新機種HERO9 BLACKは、2020年9月の登場ですから、ようやく1年が経とうとしているくらい。

 

 

価格.comの、アクションカメラ/ウェアラブルカメラ売れ筋ランキングを見ると、HERO9 BLACKが堂々の1位なのに対し、FDR-X3000は10位と大きく差を付けられています。

FDR-X3000はこれはこれで優れた製品でしたが、これを超える新しいコンセプトのモデルを、Sonyは生み出せていませんでした。

とは言え、決して新製品を出す技術がない訳ではありませんよ。

 

GoProは技術力がまだないところから、ユーザー目線で製品開発をしたのに対し、Sonyはハンディカムの技術をいかにアクションカムに注ぐか、技術者目線で開発したのです。

このコンセプトの違いが勝負に影響したと言えますが、もう少し詳しく次の頁でお話しましょう。

 

 

GoProはソフトの視点から、Sonyはハードの視点から開発が始まった

 

 

GoProの創業者ニック・ウッドマン氏が、アクションカメラ/ウェアラブルカメラを開発しようとしたのは、こんな理由からでした。

彼は根っからのサーフィン好きで、仲間がサーフ中の格好良いところを写真に残そうと、体にカメラを巻いているのを見ていたのだそうです。

 

フィルムカメラの防水仕様は、すでに2000年頃にはありましたが、カメラは手に持っていないと姿を写すことができません。

そこで自らの手で専用のカメラを作ろうと研究を重ね、後年、身体に固定して写真が撮れる、GoPro HERO 35ミリと名付けたカメラを開発しました。

 


参照:映像職人

 

その後、写真だけでなく映像も撮りたい情熱にかられ、ビデオ版のGoPro HERO3を開発して販売に至ります。

ウェアラブル式に映像を撮るには、ボディを限りなく小さくしないといけません。

 

そのため、ビデオカメラに必要がない機能を極限まで省略。

防水機能など含め、最低限必要な機能だけを搭載したHERO3は大ヒットします。

 

この事実を知ったSonyも「そんなカメラならウチの技術で十分できるだろう」と、アクションカメラ事業に参入します。

そしてSonyはハンディカムをベースにしてHDR-AS15を開発、HEROとは違ったデザインではあるものの、ハンディカムの縮小版たる製品として完成します。

 

 

技術力のあるSonyの製品であるだけに、性能はとても優れていました。

ただこの機能さえ搭載すれば事足りると言う、ユーザー目線の割り切りはできませんでした。

 

HERO3はあくまでユーザー目線で作られた製品なのに、HDR-AS15は技術者目線で作られた製品だったんですね。

そしてハンディカムも含めアクションカムは、その後のHEROシリーズに、大きくシェアを取られる事態になったのです。

 

もしも、デジタルビデオカメラがこの世に登場していなかったら、Sonyの方が技術力で勝るので、GoProカメラが登場することはなかったでしょう。

それがデジタル技術の進化で、専業ではないメーカーでもビデオカメラの製造が可能になり、アイデア次第でユーザーが喜ぶ製品を作れるようになってしまいました。

 

アクションカメラに限って言うと、GoProの方がユーザーの気持ちを掴むことが上手かった訳ですね。

今にして思えば自らの技術力で対抗するのではなく、Sonyの資本力でGoPro社を買収していれば、アクションカメラの業界はSonyの一人勝ちになっていたかも知れません。

 

これを、自動車業界で上手くいった例に置き換えてみましょう。

現在日本では軽自動車が人気で、非常に売れていますよね?

 

ならば、大手のトヨタ自動車も軽自動車を作れば売れると予想できるのに、同社はそれをしていません。

それはなぜかと言えば、軽自動車を開発するにはトヨタとて、莫大な資金が必要だからです。

 

それより開発資金を使い、軽自動車会社を買収して自社ブランドで売れば、その方が利益が出ることでしょう。

なのでトヨタでは、軽自動車で一番人気のダイハツ自動車を子会社化し、自社でも軽自動車を売っているのです。

Sonyも同じことをしていれば、今頃は、アクションカムHERO9なんて名前のカメラで、アクションカメラ業界をリードできたのではと思いますね。

 

 

アクションカメラ事業に対し、今後日本メーカーが取るべき姿勢とは?

 

 

日本ではSonyばかりでなく、かつてPanasonic・Ricoh・JVC・Nikonなど、あらゆるメーカーがアクションカメラ/ウェアラブルカメラ事業に参入していました。

最後まで頑張ったSonyがこの事業から撤退することで、日本メーカー製モデルが一旦消えることになります。

 

しかし、アクションカメラのカテゴリーから少し外れますが、最近のYouTubeなど動画サイトへの投稿ブームを反映し、新たな動画カメラが話題になっています。

日常や商品などを自分を登場させながら紹介する、YouTuberやVloggerに好まれ使われているミラーレスカメラやコンパクトカメラです。

アクションカメラより大きなセンサーを搭載し、高解像度の映像を提供して、さらに自撮りに便利な可動式液晶モニターが付いた仕様です。

 

 

機種で言うと、Canon PowershotG7X MarkⅢSony VLOGCAM ZV-1Panasonic Lumix DC-G100V-Kなどがそれ。

ボディはやや大きいものの、何と言っても1インチ以上の大型センサーを搭載しているので、画質が非常に良い。

また自撮りに便利なミニ三脚式グリップを用意し、そして歩く程度なら安定した撮影が可能な、強力な手振れ補正機能を内蔵しているんですね。

 

 

GoPro HERO9も液晶モニターを前後に備え、スムーズな手振れ補正が可能で自撮りもたやすいですが、自分を交えた自撮りも楽な上に光学ズームもできる、上記カメラの方が便利でしょう。

この手の用途のカメラなら、日本メーカーの製品の方が使いやすいので、これから需要が伸びることが期待できそうです。

 

ただそれでも、ウェアラブルなアクションカメラは別の意味で魅力的。

Sonyを始め日本のメーカーから、新たな画期的モデルが登場してくることを望みます。

 

それに応えるのに必要な絶対条件は、長時間の駆動力を持つこと。

現在はどのアクションカメラも、1本のバッテリーで駆動できる時間は、せいぜい1時間ほどです。

これが何とも歯がゆいんですね。

 

新しいモデルを出すのなら1本で最低2時間、できれば3時間以上、連続で撮影できることが必須です。

動画撮影中にバッテリー交換しないといけないのは、本当に不便。

外部電源を利用しながらの撮影だと、ウェアラブル性/アクション性が劣るし、雨の中での給電は不可能です。

 

バッテリーの持ちが悪いとのユーザーの不満は、GoProでもまだ解決できていません。

なので極力、電力を必要としないアクションカメラが待たれます。

 

これが解決できたなら、それだけでユーザーに重宝されることでしょう。

ぜひSonyさんを始め、日本のメーカーの努力でまかなって欲しいものです。

 

 

5件のコメント

  • mokkun

    Goproもかなり赤字のときが多いですよね
    需要はかなり高いはずなのにアクションカムは利益を出すのが難しいんですかね
    間違いなくこれから更に必要とされるものなのでどのメーカーにも頑張ってほしいものですね

  • 匿名

    低温下では使い物にならないGoPro

  • ゆう

    X3000やX1000Vは長らく使ってますが、どちらもメイドインチャイナなので、そもそも日本製ですらないです…

    ただ、スマホもアクションカムも、またドローンも、映像素子としてはソニーは世界シェア首位なので、そちらでこれまで通り儲けられれば、なんの問題もないといったところではないでしょうかね。

    アクションカムのオプションには、腕時計型のコントローラーなど、ソニーならではの便利なものもあり、好きではあったんですが、とうとう4K60P対応しなかったのはちょっと残念でしたねー。

  • 斎藤 義郎

    映画作るんじゃなかったら、full HDで十分!それと壊れないことサブで中華のウエアブルも持っていけば大丈夫simple is best 釣りやドラレコ代わりに使っているが、揺れるボートを一人で操船。片手で操作してレコードフィシュの瞬間を残せるかどうか。付属機能は入らない。
     中華カメラの性能があがっているからソニーごときの入るニッチはない。パナの方はまだ使っている。軽いし壊れない。

  • 匿名

    SONY製スマホを使って思う事は、アップル製に比べての使い難い事。
    日本製家電全般に言われて来た事(全部入り)の使い難さ。消費者が不便してる事への配慮が全く無いと感じる。
    SONY製アクションカム購入を思い留まった原因も、同じ懸念を拭い切れなかった。

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