近頃は特にアクションシーンとは違う、日記のように自撮りで街歩きする動画や、旅先での風景動画を撮る人が増えて来ました。
いわゆるVlogってやつですね。
ところが従来のビデオカメラでは、デザイン的に自撮りが難しかったり、アクションカメラやスマホを使うと画質的に不満だったりします。
そこで注目され始めているのが、動画撮影機能が充実したデジタルカメラ。
元々は写真を撮るのが目的のカメラなのに、搭載しているセンサーが大きいこともあって、この手のモデルを選ぶユーザーが多くなっているんです。
でもセンサーが大きく画質が良いと言っても、一眼レフやミラーレスは取り扱いが難しそうなことで、敷居が高いと思っている人もいるでしょう。
そんな人の要望に応えて、こんな新しいVlog撮影用カメラが登場しました。
そのカメラの名前は「SONY VLOGCAM ZV-1F」。
カメラにあまり詳しくないのだけど、アクションカメラやスマホを超えた、良い画質でViogを撮りたい人向け動画カメラなんです。
今回は、このVLOGCAM ZV-1Fとはどんなカメラなのか、ユーザーレビューを交えて魅力を追求し、兄弟機ZV-1やZV-E10と比較しながら、違いを検証してみたいと思います。
SONY VLOGCAM ZV-1FはVLOGCAM兄弟の末っ子だ
まずはメーカー提供のプロモーション映像で、ZV-1Fはどんな特徴があるのか把握していただきたいと思います。
この動画で、本機の大よその商品概要を把握できるでしょう。
ZV-1Fは一見すると、すでに販売中のZV-1の新型機と思われそうですが、そうではありません。
簡単に言えばZV-1の内容をシンプルにして、スマホでしか動画撮影をしたことがない人に向けた、Vlog製作におすすめの動画カメラなんです。
スマホ操作に似たインターフェイスを持っていて、電源を入れたらすぐに撮影に入れるようになっています。
そのため、起動がまどろっこしいズームレンズではなく、20㎜ F2.0(35mm換算)の超広角単レンズを採用。
この20㎜レンズは電源を入れても前玉が前に飛び出ず、瞬時に撮影できます。
自撮りでパッとレンズを向けて、スッと顔全体がフレームに入る超広角レンズです。
これがZV-1なら24㎜~70㎜ F1.8~F2.8(35mm換算)のズームレンズなので、まずレンズ全体が繰り出してからの撮影開始となります。
画角も超広角と言えるほどではなく、自撮りだと頭が少し切れてしまうんですね。
しかもこれが複数の人との自撮りだったら、全員をフレームインすることは困難になってしまいます。
カメラを構えて顔が切れずにパッと自撮りができるのは、もっと画角が狭いスマホと比べても、より便利にVlog撮影が可能になると言うことです。
「ただ20㎜単レンズは、遠くのものをズームしてアップしたい時に不便では?」
あなたはそう思われるかも知れませんね。
そんな時はSONY独自の、全画素超解像ズームを使うと良いでしょう。
これは一般のデジタルズームとは違い、画質の低下の少ないズーム機能。
単に画面の一部を切り取って引き延ばすのではなく、2000万ある画素を1000万画素や500万画素に落とすことで、最高4倍までズームするものです。
画素数を落として記録するのは、センサーを小さくすることよりも、はるかに悪影響が少ないのを応用したズーム機能と言えます。
しかも搭載するセンサーは、一般のスマホの4倍程度面積が広い1インチを採用。
これは、ZV-1と同じサイズのセンサーです。
なので本機がそもそも画質が良いのは、言うまでもありませんね。
特に小さなセンサーのカメラで苦手とされる、夜間の画質向上に威力を発揮します。
あと仕様に関してはスマホのように、操作アイコンをモニターに表示させてタッチ式にしたほか、縦撮りを可能にして違和感のないようにもしています。
電源も一般のデジタルカメラと同様に、バッテリー交換ができるようにしたほか、ケーブルを使ってのUSB充電が可能です。
端子もスマホと同じUSB-Cを採用しており、使い勝手を良くしました。
さらに本機はカメラ専用機である以上、スマホのように撮った動画や写真を、自身からSNSに投稿することができません。
しかし、新しいアプリのCreators’ Appを使うことで、手間を掛けずにBluetoothでスマホを介し投稿することが可能ですよ。
限りなくスマホに近いインターフェイスで、スマホより高画質な動画を公開できることが、本機の大きな特徴と言えるでしょう。
SONY VLOGCAM ZV-1FとZV-1/ZV-E10との違い
VLOGCAM ZV-1 24mm~70mmズームレンズ(35mm換算)
ZV-1Fはすでに述べたように、ZV-1と同じ1インチ/約2000万画素のセンサーを搭載し、そしてボディサイズも幅105.5㎜x高さ60㎜と一緒です。
ただZV-1の24㎜~70㎜(35mm換算)ズームレンズが、20㎜(同)単レンズとなっていることで、すぐ下の弟と言う立ち位置になります。
外観からすれば「大きな違いはレンズだけかな?」と思いきや、内容を確認すると、さらにいくつかのスペックダウンが見られます。
私がちょっと驚いたのは、光学手振れ補正機能が省略されていること。
エントリークラスのデジカメならあり得ますが、VLOGCAMでこのような仕様のモデルが出て来るなんて、想像もしていませんでした。
動画撮影時には電子手ブレ補正でこと足りるので、コストダウンのために、あえて写真撮影の利便性を犠牲にした?と思える仕様です。
それと本体上部には、ウインドスクリーンや外部マイクを固定するシューがありますが、これには何と電子接点がありません。
これだと光量を自動制御できないことで、外部ストロボが使えないことになります。
そもそも他のVLOGCAMと同様に内蔵ストロボもないので、本機の写真撮影ではストロボが全く使えないことになるんですね。
ZV-1/ZVE10は外部ストロボなら使えるので、ここでも写真撮影の利便性を犠牲にしていると言えるでしょう。
また、動画撮影時の録音の音質が内蔵マイクで不満なら、外部マイクを使えば音質を改善することができます。
本機もシューに固定して外部マイクは使えるものの、電子接点がないために、ケーブルを使ってマイク端子につなぐ必要があります。
これもコストダウンの犠牲になる部分ですね。
それともうひとつ。
SONY独自の技術である、ファストハイブリッドAFが搭載されていません。
ZV-1は、コントラストAFと像面位相差AFのハイブリッド仕様で、合焦時にはどちらか有利な方のAF機能を使います。
ところがZV-1FはコントラストAFのみの搭載で、場合によっては上手く合焦できな場面が出て来る訳です。
これは実際には、像面位相差AFはあまり役立たないためカットしたのか、それとも単にコストダウンのために、このような仕様にしたのでしょうか?
実際のところは分かりません。
VLOGCAM ZV-E10 24mm~75mm(35mm換算)
さて今度はZV-E10との違いですが、前面にある “α” マークで分かるように、ZV-E10はレンズ交換のできるミラーレス機です。
ベースとなったのが同じミラーレスのα6400で、ボディの大きさが異なることからも違いが容易に想像できます。
センサーにしてもスマホの約13倍も大きい、APS-Cサイズのものを搭載。
レンズは交換して自由に選べるし、1インチセンサーよりもさらに高画質な映像が得られることが、大きくZV-1Fと異なる部分です。
なので夜間での動画撮影では、ZV-E10ならさらに細かいディティールが表現できます。
以上のように、カメラの機能性能にこだわるユーザーなら、必要と予算に応じて、ZV-1かZV-E10を選んだ方が良いでしょう。
それでも動画撮影に不慣れな人や、スマホの動画撮影から卒業したい人なら、操作がシンプルなZV-1Fの方が向いているでしょうね。
ではZV-1Fの実際の画質や音質は、どんなものなのでしょうか?
ある写真家が撮影した映像がありますので、じっくりご覧になって下さい。
協力 MANABU uさん
いかがでしょうか。
特に何もいじらなくてもオートのままで、結構コントラストも高く、高画質に描写されている感じがしますね。
音質も内蔵マイクだけでも実用上十分で、あえて、外部マイクを使わなくても良いほどの性能を有していると思います。
手振れの方はラフに手持ちで撮っているせいか、少しカク付いていたりしますが、20㎜の超広角レンズの恩恵もあり、それほど安定性は悪くないのでは?
本体はバッテリーやカード込みで250gほどと軽く、純正のグリップを使っての撮影が苦にならないのも、スマホ撮影に慣れた人に取っては美点ですね。
次に、すでにZV-1Fを使っている他のユーザーは、本機にどんな感想を持っているのでしょうか。
いくつかレビューをピックアップしましたので、次頁で確かめていただきましょう。
SONY VLOGCAM ZV-1Fのユーザーレビュー
★「中々微妙なポジショニングのカメラだが、やはり普段使いと言うよりかは、作品として仕上げたい用途を想定した製品なのだろう。ちょこっと編集で済ませる位なら、ワイドレンズを備えたスマホで十分かも知れない。それでもメリットを見い出すとすれば、20㎜のワイドでF2.0の明るいレンズと1型のセンサーの組み合わせは、特に暗所動画で余裕を感じられると思う。クリエイティブルックと言うエフェクトや、ショットマークと言う目印打ち機能も使い出がありそう。」
★「Vlog用に購入。写りも動きも全て素晴らしい!白は汚れると思いきや、消しゴムで奇麗にキープできる!軽くて持ち運びするには完璧。」
★「スマホでの自撮りからステップアップするには最適。カメラ通には機能足らずの面も。手軽だし操作性もそれほど悪くない。手振れ補正は切っていた方が広く撮れるので、三脚は必須だ。夜間の撮影は、ちょっとにがてなのかもしれない。」
★「簡単・気軽に撮影できる。ポケットに入れておいて、さっと取り出して撮りたいときに撮れる。多くを求めなければ気軽でいいカメラだと思う。」
SONY VLOGCAM ZV-1Fの評価・まとめ
ここからは以上を踏まえて、私がZV-1Fを評価してまとめてみましょう。
究極に述べるなら、ある程度カメラを使いこなせる人は、本機を選ぶのは避けた方が良いと思います。
少なくとも、動画と写真を半分ずつ撮りたい気持ちがあるのなら、兄貴分に当たるZV-1の方を求めるべきですね。
何せ先に述べたように、そこそこ値段のするデジカメなら必ず搭載している、光学式手振れ補正機能がありません。
ピント合わせに威力を発揮する、ファストハイブリッドAFも搭載されておらず、コントラストAFだけしかないので片手間落ちです。
そのAFにしても、シングルモードのAF-Sしかなく、被写体が動いてもピントを追い続ける、コンティニアスモードのAF-Sがカットされていて不便。
それから本体上部にあるシューは、電子接点のあるホットシューではなく、ウインドスクリーンや外部マイクを固定するだけのコールドシューになっているのです。
外部マイクを使うとしたら、ケーブルをマイク端子につながないといけないんですよ。
ZV-1やZV-E10はシューに固定するだけで、外部マイクが使えるようになっています。
また写真撮影はJPEGのみで、上級者が好むRAWが使えません。
写真も積極的に撮ってみたい人には、ちょっともの足りないかも。
じゃあ、一体どんなユーザーにZV-1Fはおすすめできるのでしょうか?
それはもうお分かりでしょうが、それはスマホと同じくらい手軽でありながら、しかも高画質でVlogを製作したい人です。
まどろっこしいズームレンズはいらないから、電源を入れたらすぐに自分の顔をパッとフレームに入れて、動画撮影をしたい人がそれに当たるでしょう。
写真はオマケでしか撮らないから、難しいことはカメラに任せて、とにかくキレイに動画を撮りたい・・・。
そんなユーザーを狙って、本機が登場したのは間違いないでしょう。
そのためにできるだけ軽いことや、明るくて高性能なレンズ、スマホなどよりも大型のセンサーが必須となるんですね。
幸いに本機は、これらを全てクリアしています。
カメラ機能うんぬんよりも簡単に、Vlogなど日常の風景を動画に収めたいのなら、本機はピッタリと言えるでしょう。
動画撮影でも多用途な場面に使いたい、より高度な撮影がしたいなら、予算に応じて上級のZV-1やZV-E10、またはフルサイズセンサーを搭載したZV-E1を選べば良いのです。
現在のところ本機は価格的にまだこなれておらず、やや値段が高いのですが、今後は安いながらスマホを上回る性能で、動画撮影を楽しめるようになるでしょう。
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